PLトポロジーの基礎(暫定版)

久しぶりの投稿です。今回は、位相空間論から幾何学的トポロジーの方向に少し舵を切りたいと思います。PLトポロジーは多様体などを三角形分割を通して研究する分野です。そこで扱われる対象は「多面体」とよばれる三角形分割可能な図形であり、扱われる写像は「PL写像」とよばれるもので、これは定義域の適切な三角形分割について各単体をアフィン写像でうつすような写像をいいます。例えば、\mathbb{R}から\mathbb{R}へのPL写像は、グラフが折れ線である関数と同じものです。ちなみに、PL とは Piecewise Linear の略であり区分線型と訳すこともあります。もっと正確には Piecewise Affine とすべきかもしれませんが。

今回の PDF では、Rourke-Sanderson による Introduction to Piecewise-Linear Topology (以下 [RS] と書く)という古典的名著を大いに参考とし、多面体も PL 写像も三角形分割によらず内在的に定義するスタイルを取りました。[RS] はこのスタイルを貫くことで大変美しく書かれているのですが、私の PDF でそれが実現できているかは自信がありません。しかし、[RS] をはじめとする PL トポロジーの成書に多かった議論のギャップをほとんど埋めることには成功していると信じています。結び目理論・3 次元多様体論の基礎付けなどで PL トポロジーが必要になり、本を手に取ってはみたが証明が追えなかった、などという人には助けになるかもしれません。

なお、この PDF の内容は、多面体・PL写像と単体複体・単体写像との関係を述べるという最低限の内容にとどまっています。実は、このPDFを作った動機は、2次元・3次元多様体の三角形分割について説明するときに、三角形分割やその細分に関する諸事実の証明が意外に大変で、これは場所を改めてやるべきだと感じたことでした。そういう動機もあって、ここでまとめられていることは、PLトポロジー本来の内容というよりも、それを展開するための基礎といったものになっています。定理の内容も、ていねいに絵を描いて考えれば明らかと思ってもらえるものが多いと思います。

このPDFは暫定版です。本当はもっと完成度を高めてから出したかったのですが、早く読んでもらいたい気持ちもありますし、公開の時期を逃したくなかったのでこの状態でとりあえず公開します。この後は、微分トポロジーでの可微分多様体に対応する PL 多様体の定義と基本事項について書きたいと思っています(これをまだ書いていないのに PL トポロジーの基礎を銘打つべきではないかもしれません)。また、絵がないのはこのPDFの致命的な欠点です!!(非常に見栄えのする絵が描けるのが PL トポロジーの特徴です)これも何とかしたいところです。もっとも、絵がないことで、議論のごまかしをしていないことのアピールにはなっているかもしれませんが…。読むときには各自手元で絵を描くことを強くおすすめします。

PDF「PLトポロジーの基礎(暫定版)」

 

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位相空間論における反例と線形順序

位相空間論ではさまざまな例が全順序(またの名を、線形順序)を伴って構成されます。たとえば、実数直線 \mathbb{R} の通常の位相は開区間 (a,b) の全体で生成されます。これを少し変更して、実数直線に [a,b) の形の半開区間の全体で生成される位相を入れたものは Sorgenfrey 直線と呼ばれ、反例としてよく引用されるものです。これは例えば、それ自身はパラコンパクト Hausdorff だがその平方はパラコンパクトでないような空間の簡単な例になっています。

1 次元多様体で距離化可能でないものの例として、長い直線を以前に取り上げました。これも、全順序集合に開区間全体から生成される位相を入れたものです。長い直線の構成で重要だったのは、最小の非可算順序数 \omega_1 です。この \omega_1 に開区間から生成される位相を入れたものは、位相空間論で非常に汎用性の高い反例です。とくに、パラコンパクト性を一般化して得られる様々な性質が \omega_1 では成り立たない(\omega_1 は非パラコンパクト性が高い!)ことが知られています。

また、少し変わった例として Michael 直線というものがあります。これも土台となる集合は実数直線ですが、通常の開区間に加えて、各無理数 q について 1 点集合 \{q\} も開集合であるとして得られる位相が入っています。Michael 直線は正規空間となりますが、ある距離空間 M との直積が正規空間となりません。実際、そのような M として、通常の位相が入った無理数全体 \mathbb{R}\setminus\mathbb{Q} を取ることができます。この例は正規性が積について非常に保たれにくいことを示す例といえます。

以上の例のうち、実数直線・長い直線・\omega_1 は全順序集合に開区間すべてで生成される位相を入れたものです。このような位相空間を、線形順序空間 (linearly ordered space) といいます。

Sorgenfrey 直線や Michael 直線はもう少し複雑です。これらは、全順序集合において、その順序に関する凸集合(つまり a,b\in E,\, a<x<b \implies x\in E を満たすような E)の族を一つ指定し、それで生成される位相を入れたものになっています。このような位相空間を、GO 空間 (Generalized ordered space, GO-space) と呼んでいます。もちろん、線形順序空間は、GO 空間です。

このように、位相空間の主要な反例と考えられているものが、線形順序空間、あるいはより一般に GO 空間となっています。

今回の PDF では、このような反例について最初は個別に性質を見ていき、中盤にさしかかった辺りで線形順序空間と GO 空間の一般論を展開し、ある種の強い正規性(継承的族正規性)など統一的に証明できる性質を示していきます。また、GO 空間は、空間のクラスとして、線形順序空間の部分空間と同じものであることも示されます(PDF ではこちらを GO 空間の定義として採用しています)。

さらに全順序集合の完備化のテクニックを用いて、任意の GO 空間があるコンパクトな線形順序空間に稠密に埋め込まれることをみます。これは、GO 空間についての命題を線形順序空間に帰着するために用いられます。

最後に、GO 空間のクラスにおいて、位相空間のさまざまな可算性(可分性・リンデレフ性など)の間の相互関係(つまり、どの性質からどの性質に含意 \implies があるか)を調べます。図を見れば一目瞭然なのですが、一般の空間の場合に比べて、GO 空間の可算性は非常に簡単な一直線の(線形順序をなして並んだ!)含意関係があります。

この議論の過程で自然に生じる問題の中には、集合論から独立であることが分かっているものが多くあります。例えば、含意関係のなす図式で \implies と書かれている場合、\Longleftarrow には反例がある場合もありますが、反例の有無がそもそも集合論から独立であると分かっている場合もあります。独立性証明については現状の筆者の能力を越えていますが、知られている事実については必要に応じてまとめました。

PDF「位相空間論における反例と線形順序」

コンパクト開位相をめぐって

連続写像の空間に入れる位相としてコンパクト開位相が広く用いられています。これは基本的な構成の一つと言ってもいいと思いますが、位相空間論の初歩的なテキストでは軽くふれる程度の扱いが普通ではないかと思います。また、準開基により生成される位相として定義されるために、取り扱いが苦手だという声もよく聞きます。

コンパクト開位相の定義については、なぜそう定義すべきなのかピンと来ない人も多いと思います。そこで今回の PDF では、まず、関数空間の位相としてコンパクト開位相を用いる必然性を説明します。コンパクト開位相は定義域の空間が局所コンパクト Hausdorff 空間であるときに特に良い性質をもちますが、この局所コンパクト性も、ある意味で必然的な要請であることが証明されます。

コンパクト開位相による収束を実際に扱うためには、距離を用いる方法が便利な場合もあります。そこで、コンパクト開位相が距離化可能となるための一つの十分条件を述べます。ここで重要となるのは定義域の半コンパクト性 (hemicompactness) という性質であり、この条件は再びある意味で必然的であることが示されます。また、ある場合にコンパクト開位相を「広義一様収束の位相」と解釈できることを見ます。さらに、完備距離可能性についても考察します。

最後に、位相空間の(自己)同相群が、コンパクト開位相に関して位相群となる十分条件を述べます。局所コンパクト Hausdorff 空間の同相群は、コンパクト開位相について常にパラ位相群(乗法が連続)となりますが、逆元をとる操作は必ずしも連続ではなく、一般に位相群にはなります。そのための追加の条件として、局所連結性が比較的よく知られていましたが、ここでは比較的最近 Dijkstra によって知られたより弱い条件について紹介します。

PDF「コンパクト開位相をめぐって」

パラコンパクト性 PDF

位相空間のさまざまな性質の中でもコンパクト性は最も重要なものです。集合と位相の入門書では、コンパクト性の理解が一応の到達目標ということになると思います。コンパクト性の自然な拡張で、応用上もよく現れるのが局所コンパクト性で、ここまでは入門書でも解説されていることが多いでしょう。これに対して、パラコンパクト性については取り上げている本は専門書を除いては少なく、多様体を勉強する段になって唐突に現れ、何だか良くわからないうちに通り過ぎてしまうことも多いのではないでしょうか。

1 次元多様体の分類で現れた「長い直線」はパラコンパクトではない多様体です。しかし、このように頑張って例をつくろうとしない限り、眼の前に現れる多様体はパラコンパクトなものばかりであるのも事実です。これでは、パラコンパクト性が奇妙な例を排除するためにある消極的な概念であると思われても仕方がありません。そこで、今回はパラコンパクト性のもつ色々な性質を証明するのと同時に、パラコンパクト性を積極的に利用する手法にもふれたいと思います。

パラコンパクト性の定義は、「任意の開被覆が、局所有限な開被覆により細分される」というものです。したがって、パラコンパクト性についての諸性質を示すには、この被覆という集合族を集合算で操作するのが正攻法ということになります。これは強力な方法ではあるのですが、しばしば複雑になり見通しが悪くなりやすいという欠点もあります。幸いにして、パラコンパクト性には、次のような「1 の分割」を用いた特徴づけがあります。

定理.X を T_1 空間とするとき、X がパラコンパクト Hausdorff 空間であるためには、X の任意の開被覆に対して、それに従属する 1 の分割が存在することが必要十分である。

ここで、位相空間 X 上の 1 の分割とは、X 上の実数値連続関数の族 (f_\lambda)_{\lambda\in\Lambda} で、すべての x\in X,\, \lambda\in\Lambda に対して f_\lambda(x)\geqq 0,\, \sum_{\lambda\in\Lambda} f_\lambda(x)=1 を満たすようなもののことです。(ここでの無限和の意味や「従属する」の定義については PDF を参照してください。)多様体論では、1 の分割は滑らかな関数で作られました。この文脈では、1 の分割が局所的につくられた量を多様体全体へと大域的に拡張するのに使われます。最も有名なのは多様体上の Riemann 計量の存在証明でしょう。位相空間上の 1 の分割にも同様のはたらきがありますが、そればかりでなく、上の特徴づけ定理により、パラコンパクト性に関する諸性質の証明にも使うことができます。1 の分割は関数族であり、もともと演算で操作するのに適しているため、これを用いた証明には集合族を直接扱うよりも議論の見通しがよくなる利点があります(その反面、万能ではないのですが)。

さて、このように 1 の分割を理論展開の柱にしたうえで、今回の PDF ではパラコンパクト性の「積極的」利用法として、E. Michael による次の二つの結果を紹介します。

  • パラコンパクト空間上のある種の集合値関数から、連続関数を選びだすこと (Michael の選択定理)
  • パラコンパクト空間の局所的性質がある条件を満たすとき、それが大域的性質になるということ

これらはどちらも 1950 年代の非常に古い結果ですが、潜在的な応用範囲の広さのわりにあまり知られていないのではないかと思います。前者の簡単な応用として、Banach 空間の間の連続線型写像が全射であれば、そのセクションとして(必ずしも線型でない)連続写像が取れるという Bartle-Graves の定理を紹介します。また、後者の応用として、局所距離付け可能なパラコンパクト空間が距離付け可能なことの証明と、位相多様体の境界のカラー近傍の存在証明を挙げます。まだ探せば多くの応用例が見つかることでしょう。

以上はこの PDF にかなり特有の内容と思われますが、距離空間や CW 複体といったよく扱われる空間がパラコンパクトであることなど、標準的な事実の証明も含まれています。ただし、どちらもある意味で 1 の分割を利用したアプローチのため、多くの書物で見かけるものとは異なるかもしれません。距離空間のパラコンパクト性に関しては J. Dydak の比較的最近の結果に基づいており、CW 複体については Michael の選択定理がパラコンパクト性のもう一つの特徴づけを与えていることを利用します。また、最初の方では、より初等的な方法で証明される事実や、多様体でパラコンパクト性と同値になるいくつかの条件について議論します(後の方を見て大変だと感じる場合はこの辺を読むだけでも良いと思います)。

追記(2015年12月26日): 読者の方からの指摘をうけ、定理 9.1(局所距離付け可能なパラコンパクト Hausdorff 空間は距離付け可能)の証明を修正しました。貴重なご指摘をいただき有難うございました。

PDF「パラコンパクト性をめぐって」(2015 年 12 月 26 日修正)

1次元多様体の分類

トポロジーの最大の目標が位相空間の分類であるとすれば、その目標に最も力が注がれている空間のクラスは多様体であると言えるでしょう。大雑把には、位相空間 Mn 次元多様体であるというのは、M の各点が \mathbb{R}^n に同相な近傍をもつということです。曲線は 1 次元多様体、曲面は 2 次元多様体とみることができます。地球上に暮らしている私たちが、狭い範囲を行き来している分には地面を平面のように思って構わないことは、球面の 2 次元多様体としての性質を表しています。

しかし、多様体の定義にはさらなる制限がつくのが普通です。ほとんどの場合、多様体は Hausdorff 空間であることが要求されます。これは不自然な条件のようにも見えますが、この仮定なしには、1 次元多様体ですら分類には手が付けられなくなってしまいます。たとえば、次の例を見てみましょう。

例 (Y 字型の空間) 空間 X=\mathbb{R}\times\{0,1\} において、各 x<0 に対して  (x,0)(x, 1) とを同一視してえられる商空間を M とする。

この空間 M は直観的には、二本の数直線を用意してから、原点よりも左側の部分だけを貼り合わせて一本にしてできる空間です。原点は同一視されずに残っていて、M には二つの原点 p, q があることに注意しましょう。このとき、p の任意の近傍と、q の任意の近傍は原点の左側の貼り合わされた部分で交わってしまい、よって M は Hausdorff 空間ではありません。

しかし、Hausdorff 空間でないということを除いては、M は 1 次元多様体の条件を満たしています。一般的に、U\mathbb{R} の開集合とするときに、\mathbb{R}\times\{0,1\} において 各 x\in U に対して (x,0)(x,1) を同一視してできる空間は、「Hausdorff 空間とは限らない多様体」です。U を様々に取り換えるだけで、様々な互いに同相でない「1 次元多様体」が作られてしまうことからも、Hausdorff 性の重要さが分かると思います。

そこで、以下では Hausdorff 性は仮定することにしましょう。このとき 1 次元多様体の例としてすぐに思いつくのは、直線 \mathbb{R} と円周 \mathbb{S}^1 です。連結でないものを含めれば、直線と円周を並べただけのものも 1 次元多様体です。しかし、連結なものに限れば、1 次元多様体は \mathbb{R}\mathbb{S}^1の他にはない(ただし、同相なものは同じと考える)と考えるのはごく自然ではないでしょうか。

ところが、その期待に反して、これ以外に 2 種類の 1 次元多様体が存在します! 一つは「長い直線」\mathbb{L} であり、もう一つは「開いた長い半直線」\mathbb{L}_+ です。非常に大雑把にいえば、長い直線は、通常の直線に比べて両側に向かって、濃度の意味で「より長く」伸びています。

「より長く」の意味を理解するために、通常の数直線 \mathbb{R} の性質を思い出しましょう。\mathbb{R} は、両端に理想的な点 +\infty, -\infty を付加してコンパクト化することで、単位閉区間と同相な空間をつくることができます。このとき、新しい点 \pm\infty は、もちろん、\mathbb{R} の中の可算列の極限になっています。長い直線 \mathbb{L} にも同様のコンパクト化を行うことができるのですが、このとき、新しい端点 +\infty, -\infty は、\mathbb{L} の中のいかなる可算列の極限にもなっていません! つまり、長い直線の端はあまりに遠すぎて、可算のステップで到達することができないのです。

もう一つの開いた長い半直線 \mathbb{L}_+ は、単に長い直線を途中で切ってできるものです。つまり、\mathbb{L} から一点を除いたもののそれぞれの連結成分が \mathbb{L}_+(と同相な空間)です。\mathbb{L}_+ は一方の端には可算列で到達でき、もう一方の端には可算列で到達できないという非対称性をもちます。

長い直線は、ふつうの多様体に比べて、かなり奇妙な性質を示します。たとえば、長い直線はユークリッド空間に埋め込むことが不可能です。また、可微分多様体の構造を与えることはできますが Riemann 計量をもちません。そこで、長い直線に類するものを排除するために、多様体には Hausdorff 性に加えて「第二可算公理」「パラコンパクト性」「距離化可能性」「Lindelöf 性」などといった性質(これらは連結な多様体については互いに同値!)を仮定することがほとんどです。この性質を仮定すれば、連結な 1 次元多様体は \mathbb{R}\mathbb{S}^1 の二つだけです。しかし、最近ではこの制約を課さない、したがって長い直線も含んだ多様体の研究も行われています。2015 年に出版された Non-metrisable Manifolds という本は、この分野でのはじめての専門書です。

さて、Hausdorff 性だけを課した、第二可算公理などを課さない 1 次元多様体は、\mathbb{R}\mathbb{S}^1 のほかには \mathbb{L}, \mathbb{L}_+ の二つしかないことが知られています。この「分類定理」はある程度は良く知られた事実と思われ、志賀浩二「多様体論」ではそれを示すことが演習問題になっています。しかし、この本には詳しい解答はないようです。なんと、上で紹介した “Non-metrisable Manifolds” にも、分類定理の証明はありません(にもかかわらず、本文中では分類定理を断りなく使っています)。

下の PDF ファイルでは、このようにアクセスが困難な状態であった(と思われる) 「長くてもよい」1 次元多様体の分類定理の証明をまとめてみました。 このファイルの中に長い直線の定義やそれが多様体となることの証明も含まれています。なお、長い直線の定義を実際に理解するには順序数(とくに、最小の非可算順序数 \omega_1)についてある程度知っている必要があります。知らなかった方はこれを良い機会に集合論の教科書も読んでみてください!

1 次元多様体の分類 PDF

局所コンパクト空間と exponentiability

Twitter のタイムラインを見て、考えたことを書いてみます。

位相空間 X から位相空間 Y への連続写像全体にコンパクト開位相を導入したものを Y^X と書くとき、次の事実は代数的トポロジーで非常によく使われます。

定理. Y を局所コンパクト Hausdorff 空間とするとき、任意の位相空間 X, Z に対して、自然な全単射 Z^{X\times Y}\cong (Z^X)^Y がある。

圏論的には、この事実を「局所コンパクト Hausdorff 空間は、位相空間の圏 \mathbf{Top} において exponentiable である」と表現することができます。

実は、これには逆が成り立ちます。圏論有名サイトの nLab によると位相空間の圏で exponentiable であることは “core compact” であることと同値であり、また、Hausdorff 空間が core compact であることは局所コンパクトであることと同値です。

したがって、定理の全単射が任意の位相空間 X, Z について存在するような Hausdorff 空間 Y は、そもそも局所コンパクトでなければなりません。

このことは少し考えれば自分でも示せると思っていたのですが、案外そうでもありませんでした。結局考え続けた結果、Ernest Michael の論文を参照して仕上げることになりました(Michael は位相空間論で多くの重要な仕事をしています)。 完全に自力で出来なかったのは残念です。

局所コンパクト空間と exponentiability

上の PDF ファイルにまとめました。話題を提供していただいた方に感謝します。

次元論PDF

yamyamtopo です。トポロジーをしています。

Twitter で何回か、「次元論 PDF 」なるものを作成しているというツイートをしました。

まだ、執筆途中なのですが、最近筆が止まってしまい、図らずも「安定域」に達してしまったので、とりあえずここで公開しようと思います。

ダウンロードはこちらから→ 次元論 PDF

タイトルは「位相次元論の基礎」としました。これは(おそらくはよりメジャーな)環の次元論などと区別したつもりの題名です。気持ちとしては、次元論の基礎としたかったのですが。なお、このテーマを扱った和書は、1950年の森田紀一先生が書かれた非常に古いものしかありません。それがこれを書いてみた理由の一つでもあります。

位相次元論が完成したのは古く、1920 年代くらいです。その頃の問題意識として、R^n と R^m が n≠m のときに位相同型でないことを厳密に証明したいというものがありました。この問題を解く初期のアプローチが次元論です。すなわち、位相空間に対して、「次元」という位相不変量を定義し、R^n の次元が n であることを証明しようとしたのでした。現在、この事実の証明は、ホモロジー論により置き換えられていますが、元々のアプローチにも味わい深いものがあり、是非多くの人に知っていただきたいと思っています。

現在書かれている部分は 73 ページありますが、そのうち最初の 19 ページに相当する §§1-6 では、最も基本的な理論をまとめました。ここまでで、R^n の次元が n であることが証明されるほか(ただし、Brouwer の不動点定理を援用します)、次元の和集合・積などについてのふるまいについての基本定理が示されます。次元論を初めて学ぶ方は、まずここまで読まれるのが良いと思います。

後にに続く §7 と §8 は、「埋め込み定理」と「一致定理」という、これも次元論の重要な定理の証明に充てられます。§7 はその準備として、開被覆と脈体 (nerve) についての基本事項を説明します。これは一言でいえば、一般の位相空間を単体複体で近似して、幾何的な性質を調べやすくする道具です。

§8 で示される「埋め込み定理」は、 n 次元以下の可分距離空間がすべて 2n+1 次元ユークリッド空間に位相的に埋め込めることを主張します。(Whitney による多様体の埋め込み定理でも、n 次元多様体の一般の位置での埋め込みには 2n+ 1 次元ユークリッド空間が必要なのでした。)

さて、位相次元には複数のアプローチがあり、Poincaré のアイディアに基づく帰納的次元と、Lebesgue のアイディアに基づく被覆次元が主なものです。さらに帰納的次元には二種類があります。§8 で示される「一致定理」は、これらの次元が、可分距離空間の範囲内では、すべて一致することを主張するものです。ここでは、一致定理は埋め込み定理の副産物として証明する形を取ります。

§9 は、被覆次元を球面 S^n への写像の拡張可能性によって特徴づける定理を紹介します。この話は、後に続く §10 のコホモロジー次元の話に続く予定のものです。コホモロジー次元は、Eilenberg-Mac Lane 空間への写像の拡張可能性を次元の定義としていると解釈でき、§9 の話と対応します。…というのが筋書きですが、実際にはご覧のとおり、ホモロジー論の初歩を書いているうちに、力尽きて尻切れトンボの状態となっております。

今後、内容を書き終えることのほかに、図を補う・参考文献を補うなどのことも残っているのですが、それを待っていてはいつ陽の目を見るか分からないということもあり、公開することにします。